こんにちは!今週もお疲れ様です
今日は「的」の使い方についてです。「この対策には効果がある」という意味の文で、「この対策は有効だ」と「この対策は有効的だ」、どちらの表現も目にしたことがありませんか?正しいのはどっちでしょうか?それともどっちもありなのでしょうか?
「有効」に「的」はつくか、つかないか
実は「有効的だ」は誤りで、「有効だ」が正しい形です。基本的に「的」は漢語の名詞につきますが、「有効」のようなナ形容詞でもある単語につけるとちょっと不自然になってしまいます。ほかにも、例えば「安全」「重要」「危険」のような名詞でありナ形容詞もある言葉は「安全的な」「重要的な」「危険的な」とは言いません。
では、なぜ「有効」は「有効的」と間違えられるのでしょうか?「有効」の場合、ほぼ意味が同じ「効果的」という言葉には「的」が使われていたり、読み方が同じ「友好的」という言葉があったりして、それにつられてしまうからだと言われています。「有効」は、日本語母語話者もうっかり間違える、紛らわしい奴なのです。
「的」の基本をおさらい
「〜的」は主に漢語の名詞(音読みの名詞)につく接尾語です。これはもともと英語の ‘-tic’ を訳したものと言われており、そのためか曖昧で造語力が高いです。「的」の意味や機能についてはいろいろな解説がありますが、ここでは山下喜代氏の考察を参考に三種類の機能を紹介します。
1. 「〜に関する」「〜としての」「〜における」などを表す。
教育的観点(教育に関する観点)
学問的業績(学問における業績)
2. 「〜のような性質を持っている」「〜という状態である」を表す。※主に抽象的な名詞に付く
本質的課題(本質性を持った課題)
庶民的食事(庶民らしい食事)
絶望的状況(絶望の状態にある状況)
3. 「〜のような」という比喩を表す。※より具体的な名詞に付く
母親的存在(母親のような存在)
村上春樹的文体(村上春樹のような文体)
名詞に「的」がつくと、「名詞+的」はナ形容詞のように機能します。そのため、例えば「積極的」が名詞を修飾するときは「積極的な」、副詞として働くときは「積極的に」、述語になるときは「積極的だ」や「積極的である」などとなります。
特に書き言葉では、上記の例のように「〜的」と名詞の間の「な」は省略することもありますが、少し硬い印象になります。また「比較的」はこれ自体が副詞とされていますが、「に」をつけず「比較的安い」のように使うこともあります。
「的」の比較的新しい用法
先ほども述べた通り、「的」は造語力が高いので、本来の使い方から外れた用法が生まれやすいです。以下の二つは「的」の比較的新しい用法です。日常生活ではよく使われますが、砕けた若者言葉なので使う場所には注意しましょう!
1. 「〜の面では」「〜の立場・視点では」
デザイン的にはイマイチだな(デザインの面では)
私的にもそう思う(私の視点からも)
※ 私的:「私もそう思う」とはっきり主張することを避けたいときに、曖昧さの出る「的」を挟むことで自分の意見を少し遠回しに言う効果があります。
2. 「〜というような」:引用・例示を表す。
そんなに難しくない的なこと言ってたよ(そんなに難しくないというようなことを言ってた)
チョコレートのどか食い的なことはもうやめたんだ(どか食いするようなことは)
以上、日本語をさらに曖昧にするややこしいけど便利な言葉、「的」についてでした。また来週お会いしましょう〜!千絢
English
Hello! Otsukaresamadesu for this week
Today’s topic is the use of 的. Have you ever seen both expressions この対策は有効だ and この対策は有効的だ, used to mean ‘This measure is effective’? Which one is correct, or could both be acceptable?
Does 的 attach to 有効?
In this case, 有効的だ is incorrect, while 有効だ is correct. Generally, 的 attaches to Chinese-origin nouns, but when attached to words that are also な-adjectives like 有効, it sounds unnatural. Similarly, for words like 安全 (safety), 重要 (importance), and 危険 (danger), which function as both nouns and な-adjectives, we don’t say 安全的な, 重要的な, or 危険的な.
So, why is 有効 often mistaken with 有効的? It might be because 効果的 (effective), a word with almost the same meaning, uses 的, or the word 友好的 (friendly) has the same reading, making it to confuse them. 有効 is tricky, even for native Japanese speakers.
A Quick Review of 的
的 is a suffix mainly attached to Chinese-origin nouns (those with an on’yomi reading). Originally, it was a translation of the English ‘-tic’, which is why it is so ambiguous and capable of forming new words. There are various explanations of its meanings and functions, but here, I’ll introduce three functions based on Kiyo Yamashita’s analysis:
1. To indicate ‘related to’, ‘as’, ‘within’, etc.
教育的観点 (an educational viewpoint) - a viewpoint regarding education
学問的業績 (academic achievements) - an achievement in academia.
2. To express ‘having a quality of’ or ‘being in a state of’. (Mainly used with abstract nouns)
本質的課題 (an essential issue) - an issue with essence
庶民的食事 (common meal) - a meal typical of common people
絶望的状況 (a desperate situation) - a situation in a state of despair.
3. To metaphorically mean ‘like’. (Attached to more specific nouns)
母親的存在 (a mother-like existance)
村上春樹的文体 (a writing style like Haruki Murakami’s)
When 的 is attached to a noun, the ‘noun + 的’ functions like a な-adjective. For example, 積極的 (positive) becomes 積極的な to modify a noun, 積極的に when used as an adverb, and 積極的だ/積極的です when used as a predicate.
Especially in writing, the な between 〜的 and the noun can be omitted, as in the examples above, but it may sound a bit more formal. The word 比較的 is considered an adverb in itself and is often used without に, such as 比較的安い (comparatively cheap).
Comparatively New Uses of 的
As mentioned earlier, 的 has high creative potential, so some usages have been created that deviate from its original use. The following two are relatively new uses of 的. They are commonly used in everyday language, but mainly as slang among young people, be careful when using them!
1. To express ‘from a viewpoint of’ or ‘In terms of’.
デザイン的にはイマイチだな (In terms of design, it’s not great)
私的にもそう思う (I also think so, from my point of view).
Note: 私的 can be used to say your opinion a bit more indirectly by inserting 的, when you want to avoid clearly asserting it.
2. To indicate examples or quotes, meaning ‘something like’.
そんなに難しくない的なこと言ってたよ (They said something like ‘it’s not that tough’)
チョコレートのどか食い的なことはもうやめたんだ (I’ve stopped doing things like binge-eating chocolate).
That’s all about 的 in Japanese, a tricky but useful word that makes Japanese even more ambiguous. See you again next week! From Chihiro
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